『公研』2023年4月号「めいん・すとりいと」

 

 2023年4月は、4年に1度の統一地方選挙が行われる月だ。9日に都道府県・政令市の選挙が、23日にそれ以外の市町村の選挙が行われる。統一地方選挙、と言っても、知事や市町村長は任期途中の辞任に伴って選挙のタイミングが変わるし、議会のほうも1950年代の昭和の大合併、そして2000年代の平成の大合併をきっかけに異なるタイミングで選挙を行う地方自治体が増えた。結果として、統一地方選挙に参加する自治体は全体の3割を切っている。

 各種選挙の中で、相対的に高い統一率を維持しているのが都道府県議会議員選挙だ。その理由は単純で、戦後の都道府県は合併を経験していないし、議会は解散されにくいからである。統一地方選挙に参加していないのは、復帰後に県議会選挙を行った沖縄県と、東日本大震災の影響で特例的に議員任期が延長された岩手県・宮城県・福島県、そしていずれも汚職を理由として自主解散を経験した東京都と茨城県の6都県のみである。

 統一率が高く、結果として日本の多くの地域がカバーされることになるために、統一地方選挙では都道府県議会議員選挙の問題が全国的には議論されやすくなる。そこで近年しばしば注目されるのが無投票当選の問題である。今回の統一地方選挙では、4月1日現在で936の選挙区のうち、348の選挙区(37・2%)が無投票である。議席で見ると、2239の議席のうち約4分の1にあたる565議席が決まった状態で選挙を迎えることになる。とりわけ深刻な状態と言えるのは、議席の60%以上が無投票で決まっている山梨県であり、和歌山県・徳島県でも50%に近い議席がすでに決まっている。

 統一地方選挙後半の市町村選挙でも、特に町村議会議員選挙を中心に多くの無投票が見込まれる。しかし、町村議会の無投票と、都道府県議会のそれは異なる理由で生じているのではないか。町村議会の場合には、いわゆる「なり手不足」の問題が大きいと考えられる。高齢化が進む過疎地域では現役世代がそもそも少なく、すでに定職に就いている現役世代の人々が、報酬が十分に高いとも言えない議員に敢えて立候補しようとすることは少ない。高齢者を中心に立候補者を集めても、議会の定数に届かないのが深刻な問題となっている。

 都道府県議会の場合は、同じ意味で「なり手不足」とは言い難い。都道府県議会議員であれば、立候補者の多い都市も無投票の地域も報酬の水準は同じだし、過疎地であっても町村よりも領域は広がり定数は小さくなるから、議員になることを希望する人がいないわけではない。そこで問題になるのは「挑戦者」の不足である。無投票になりがちな定数1、2の選挙区では現職を中心とした秩序が存在し、勝ち目の少ない選挙に挑戦したい人は少ないのだ。しかも、単に選挙区で勝ち目が乏しいだけではなく、勝っても1人の新参者は議会で存在感を発揮することが難しいことも見えている。

 政治の場ではそういう無理への挑戦こそが求められる、と考えたい人はいるかもしれない。しかし、そんな「挑戦者」だけにやたらと重い負荷を背負わすしくみは続かないだろう。緊張感のある競争状態を作り出すためにも、現状への挑戦を社会としてどう促すかを考え直すことが必要だ。他にもそのような局面は多いだろうが、都道府県議会選挙はその最前線にある。

神戸大学教授

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