この夏、次の3人が揃って80歳の誕生日を迎える。これはいかなる偶然であろうか。
*ドナルド・J・トランプ=6月14日(双子座)=第45代およぶ第47代大統領
*ジョージ・W・ブッシュ=7月6日(かに座)=第43代大統領
*ビル・クリントン=8月19日(獅子座)=第42代大統領
3人全員が同じ1946年夏の生まれである。年齢差は最大でも66日しかない。そんな3人が8年ずつ、合計24年も米大統領を務めることになった。
46年は第2次世界大戦が終わった翌年で、米国がもっとも自信に満ち溢れていた年である。3人はいわゆるベビーブーマー世代の先頭に当たり、生まれた場所はもとより、その後の人生行路も大統領になった経緯も、そして主張や仕事ぶりもさまざまであった。
3人を主役とするドラマを作ったら、さぞかし面白い同時代史ができそうである。例えば、ケネディ大統領が暗殺された63年11月22日、3人は揃って17歳の高校生である。それぞれどんな状況であったのか。
クリントン少年はその4カ月前、地元選出のフルブライト上院議員が推薦した少年団の一員として、ホワイトハウスでケネディ大統領に会っている。半袖ワイシャツ姿の少年が、大統領と握手する有名な写真が残っている。「あれで政治家になろうと思った」とは、後年の弁である。授業中にケネディ暗殺を知ったが、「家族を失ったような気持ちだった」と回想している。JFKは文字通りの「ヒーロー」だったのだろう。
何しろ3人は同世代だから、米国史における重大事件を同じタイミングで体験している。ベトナム戦争には誰も従軍していない。クリントンはタイミングよく英国に留学して難を逃れた。ブッシュはテキサス空軍州兵になるという「裏技」を使った。トランプは、骨棘症というめずらしい病気を診断されて徴兵を回避している。要するに「みんなやってること」だったのであろう。
91年の冷戦終結(ソ連崩壊)時には全員が45歳の壮年である。ブッシュ氏の父はすでに大統領であり、湾岸戦争で勝利を収め、一時は政権支持率が9割に達した。ところが景気はそこから下降曲線をたどり、92年の大統領選ではアーカンソー州のクリントン知事に敗れてしまう。ホワイトハウスを去る父の姿を見て、ブッシュは衝撃を受けたはずである。そして94年にテキサス州知事の座を射止め、共和党「ブッシュ王朝」の後継者として名乗りを上げる。この時期のトランプは、まだ純然たるビジネス界の人物である。
2001年、55歳で大統領になっていたブッシュ氏を「9・11テロ事件」が襲う。中東での戦争を決断することになるが、それは多くの犠牲を伴う。クリントンの妻、ヒラリーは上院議員になっていたが、イラク戦争を支持したことが仇となり、08年の民主党指名を逃してしまう。この時期、トランプはTVスターに転身していたが、ニューヨーク州でヒラリーに政治献金をしている。まだ政治への野心は見られない。
3人の足跡は、米国の戦後80年史そのものである。いずれ歴史家の手によって、3人をまとめた評伝が書かれることだろう。
他方、次の28年米大統領選挙が過ぎれば、もう世代的な後戻りはないだろう。後継者がヴァンス副大統領(84年生)ならミレニアル世代、マルコ・ルビオ国務長官(71年生)ならX世代となる。民主党側ではギャビン・ニューサム加州知事(67年)がX世代、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(89年生)ならミレニアル世代となる 。
おそらく21世紀も後半になれば、「クリントン~ブッシュ~トランプ」の3人はひとくくりにされて、「米国が世界の覇権を有していた時代の群像」となるのであろう。ちょうど今日のわれわれが、西郷隆盛や大久保利通や伊藤博文や山県有朋をまとめて「明治の元勲」と呼んでいるように。
3人のブーマー大統領の間にも、「西郷と大久保」のように濃密なドラマがあった。われわれは同時代人としてそれらを目撃してきた。しかるに次の時代になれば、そんなことはどうでもよくなってしまうのだ。
次の時代の米国、そして世界はどうなっているのだろう。正直、見当もつかないが、今までとは大きく変わっていることだけは間違いあるまい。
エコノミスト
