『公研』2020年12月号
竹村 公太郎
地球気候変動
温暖化は確実に進んでいる。温暖化により気象は狂暴になり、未来の日本列島に襲いかかってくる。未来の気候変動を考えるとき、是非、知っておくべきことは、過去の地球全体の気候変動である。
何十万年以上の長期な時間軸で、地球の気候変動はどのように推移したのか。その地球の気候変動の中で、日本列島はどのような状況にあったのか。この過去の日本の姿は、未来の日本を考えるうえでの指針となる。
図は、地球の34万年間の気温変動の遷移である。図を作成した元データは、2000年(平成12年)に国立極地研究所の教授に教えていただいたもので、南極の氷床をボーリングして得た酸素同位体組成の数値である。この数値は当時の大気温を示している。データは極めて膨大な数値データだったので、200年平均値を算出し、3000年間の移動平均値を求めて図化したものである。
私たち土木技術者が作業したもので、地球物理学的な正確さには欠けるが、地球の長期の気候変動の傾向は鮮やか表現できた。
6000年前の地球の温暖化
この図では、2万年前のウィスコンシン氷期や、6000年前の縄文前期時代の温暖化時期が明確に表されている。この図によると縄文前期6000年前、200年平均気温は、現在より2℃高かった。この値は、一瞬の値ではなく200年平均値であることに注意を要する。
縄文前期、海面が数メートル上昇していたことは地質学的に実証されている。海面が数メートル高かった理由は、陸上の氷河が融け海水を増加させ、海水温上昇により海水が膨張することによる。
温暖化の海面上昇で最も大きな影響を受ける国が、海に囲まれた島国である。先進国では英国、オランダ、オーストラリア、米国、中国そして日本がある。この中で最も大きなダメージを受けるのが日本である。
何しろ日本の大都会のほとんどが、海に面した低平地の沖積平野に位置しているからだ。
未来の災害
掲載図の6000年前の縄文海進から現在までの大気温の傾向を見ると、地球は寒冷化のトレンドにあった。たしか私が小学生のころは、地球の寒冷化が叫ばれていた。21世紀の今、その地球が温暖化を示している。寒冷化から一気にV字転換で温暖化に向かっている。地球規模の気候変動を、短い人生時間軸の中で目撃していることにもなる。これが本当とは今でも信じられない。
地球の温暖化が進展するとき、日本列島は二つの側面からの影響を受ける。一つは「気象の狂暴化」で、もう一つは「海面上昇」である。
気象の狂暴化は想定外の豪雨による災害である。これは日本列島を山の方から攻めくる。海面上昇はじわじわと何百年間も続いていく高潮災害である。これは日本列島を海の方から攻めてくる。
日本文明は、地球規模の気候変動の最前線にいる。 日本水フォーラム代表理事