これからの展望
北朝鮮の台頭は、東アジアの国際情勢にどれだけ影響を与えるであろうか。もし北朝鮮がロシアや中国との軍事協力を強めた場合には、少なくとも日米韓にとっては望ましくはないだろう。しかし、中ロ朝の軍事協力はありえるのだろうか。
ロシア・ウクライナ戦争で北朝鮮とロシアが軍事協力を進めていることは事実である。それに、北朝鮮は、ロシアが有利に戦争を展開し、帝国主義勢力に打撃を与えることを望んでいるので、可能な限りロシアを支援するであろう。しかし、もしロシアが不利な条件をのんで停戦するようであれば、停戦に反対するであろう。ロシアが不利な条件をのむということは、ロシアが帝国主義勢力に敗北したことになるからである。
また、ロシアからどのような見返りをもらえるかはロシアが勝利してこそ期待できることである。そのため、停戦に向けた動きで北朝鮮とロシアの間に不和が生まれる可能性はある。
不和が生まれたら、2024年6月19日にロシアと北朝鮮の間で締結された包括的戦略パートナーシップ条約は形骸化するであろう。そもそも北朝鮮は包括的戦略パートナーシップ条約があるから武器や軍部隊を送ったのではない。包括的戦略パートナーシップ条約の批准が完了したのはロシア側が11月9日であり、北朝鮮側が11月11日であることが、それを裏付けている。その前から北朝鮮はロシアに武器や軍隊を送っているのである。包括的戦略パートナーシップ条約が本当に信頼できるものになるのかは、これからのロ朝の軍事協力にかかっている。
北朝鮮と中国の関係は良好?
北朝鮮と中国の関係もあまり良いわけではない。米国やヨーロッパと対立することになるロシア・ウクライナ戦争は、中国にとって望ましいものではない。経済的に米国やヨーロッパとの関係が強い中国は、米国やヨーロッパと対立を望ましいとは考えていないのである。だから、中国はロシア・ウクライナ戦争に直接かかわっていない。そのために、ロシアに武器や軍部隊を送る北朝鮮にも困惑しているであろう。
ただし、北朝鮮は、そのような中国の煮え切らない態度に苛立っているであろう。北朝鮮にとって望ましい中国は、米国と対立する反帝国主義勢力の一員である。しかし、現実はそうではない。東アジアにおける中ロ朝の連携は実際にはかなり難しいと言わざるを得ない。そのため、中ロ朝の軍事協力については、警戒は必要であるが、それほどの脅威になるわけではない。
とは言え、ロシアや中国だけでなく、北朝鮮だけでも日本を滅ぼせるだけの核兵器を保有している。それに、米国でドナルド・トランプ大統領が就任し、韓国の政治混乱が続くようであれば、日米韓の連携には大きな支障があるであろう。日本は、中ロ朝の軍事協力に警戒しながらも、日米韓の連携を前提としない安全保障政策を模索することになっていくであろう。聖学院大学教授・宮本悟