2026年、新しい年の干支は「丙午(ひのえ・うま)である。前回の丙午、1966年に出生数が急減したことはつとに有名だ。この年に生まれた女性は気性が荒く、夫の寿命を縮める、という日本固有の俗信があり、出生数が前年比25%減となった。それでも66年(昭和41年)生まれは136万人もいた。一昨年、24年の出生数が68万人であるから、ちょうどその半数ということになる。いかにわが国の少子化が進んでいるか、ドキリとさせられる数字である。
今年は、その「ひのえうま世代」が還暦を迎える。小泉今日子さんや長嶋一茂さんが該当するが、今時の60歳はしみじみ若い。「人生百年時代」においては、当然、そうであるべきだろう。
十干の「丙」は甲乙に続く3番目。属性は火の兄、方角は南、季節は夏。陽気で明るい性格を有する。「あきらか」「さかん」という意味もあり、経済的、社会的なブームが起きやすい。今風に言えば、「炎上」しやすい年と言えるかもしれない。
十二支の「午」は7番目に当たり、ちょうど折り返し地点に当たる。これまた属性は火であり、陽の極致である。太陽は頂点に達している(正午)が、ピークを越えるとじょじょに日は傾き始める。動物ではもちろん「馬」に当たる。
相場格言では「辰巳天井、午尻下がる」が有名だ。それまでの株高が転換点を迎えることがあり、過去6回分の日経平均の平均騰落率を計算すると、午年は▲5%と十二支では唯一のマイナスとなる。
特に1990年の午年は強烈だった。日経平均が前年末の3万8915円から秋には2万円割れに至った。日銀の公定歩合引き上げと、大蔵省の土地関連融資の総量規制がバブル崩壊の引き金を引いた。今年も利上げ局面にあるだけに、株価の動向には気を付けたいところである。
先の【丙午】(ひのえ・うま)はどんな年であったのか。
1966年の日本経済は「いざなぎ景気」が本格化し、実質成長率10%台の高度成長期に突入する。「3C」(カー、カラーテレビ、クーラー)が流行語となり、国民生活向上への意欲が強まった。ビートルズが来日して日本武道館で公演し、社会現象となった。テレビではNHKの朝ドラ『おはなはん』が視聴率50%を獲得。民放では特撮シリーズ『ウルトラQ』『ウルトラマン』が放送される。なるほど、「炎上」が多い年であった。
政治に目を転じると、国内では自民党に不祥事が頻発して、国民の信頼が失墜する。ときの佐藤栄作首相は、秋の自民党総裁選挙で藤山愛一郎候補の挑戦を辛くも凌ぐが、年の瀬にいよいよ進退窮まって衆議院解散に打って出る。人呼んで「黒い霧解散」。結果は自民党が意外な善戦で、「大山鳴動して鼠一匹」となった。
今年も、高市早苗内閣が高い支持率を武器に、衆議院解散のタイミングを窺っているという観測が絶えない。2027年4月には統一地方選挙が控えている。それ以降になると、地方議員が真面目に総選挙を手伝ってくれなくなるから、与党が不利になると言い伝えられている。年末にご注意、と言っておこう。
1966年の世界では、ベトナム戦争が泥沼化し、米国内では黒人暴動が頻発。ジョンソン政権への批判が高まり、中間選挙では民主党が大敗した。中国では毛沢東が復権をめざし、文化大革命が全土に広がった。ロンドン発のファッション革命で、「ミニスカート」がブームになった年でもある。
まさに「丙」と「午」、二つの「火」のパワーが掛け合わさって、熱量が半端ない年であった。今年もまた、「熱い年」となるのではないか。と思ったら、年初から米国がベネズエラを軍事攻撃である。くれぐれも賢く乗り切っていきたいものである。
エコノミスト